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大阪高等裁判所 平成6年(ラ)133号 決定

抗告人(原審事件本人) 甲野花子

相手方(原審申立人) 乙山太郎

未成年者 甲野さち 外1名

主文

一  本件即時抗告のうち職務代行者選任に係る部分を却下し、その余の部分を棄却する。

二  抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一  即時抗告の趣旨及び理由

別紙即時抗告申立書(写し)記載のとおり

二  当裁判所の判断

1  職務代行者選任の保全処分を命ずる審判に対する即時抗告について

家事審判法15条の3の審判前の保全処分に対する不服申立てについては同法14条が適用され、最高裁判所の定めるところにより即時抗告のみが許されるところ、家事審判規則15条の3第1、2項の規定するところによれば、同規則74条1項による親権の喪失の宣告の申立てがあった場合における職務代行者選任の保全処分については、その申立てを却下する審判に対しても、その申立てを認容する審判に対しても、即時抗告ができるものとされてはおらず、他にこれらの審判に対し即時抗告ができるものとしている最高裁判所の定めはない。

したがって、本件即時抗告のうち、抗告人の職務代行者を選任する保全処分を命ずる審判に係る部分は、不適法として却下を免れない。

2  親権者の職務執行停止の保全処分を命ずる審判に対する即時抗告について

当裁判所も、一件記録に照らし、本件親権者の職務執行停止の申立てを認容した原審判は正当であって、本件即時抗告のうち、これに係る部分は理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり訂正等するほか、原審判の理由に記載のとおりであるから、それを引用する。抗告人が当審において提出した疎明資料も、なおこの判断を左右するに足りるものではない。

(一)  原審判2枚目表8行目の「次女」を「二女」に、同裏8行目の「抗議電話」を「抗議の電話」に各改める。

(二)  同3枚目表3行目の「引続いて発生しており、」を「上記救急車による搬送の事態は、12日前の同様の事態に引続いて発生しており、」に、同4行目の「の事情」を「がなされた疑い」に、同9行目の「(1才10月)」を「(面接当時満1歳9か月)」に、同裏2行目の「肯認」を「自認」に各改め、同4行目冒頭から同5行目末尾までを次のとおり改める。

「以上の事実関係によれば、抗告人は、未成年者らに対し、自ら若しくは内縁の夫とともに虐待をし、又は内縁の夫による未成年者らへの虐待を防止しなかったものというべきであるから、本案の事件において、親権の喪失宣告の審判がなされる蓋然性があるものというべきである。上記事実関係に照らすと、未成年者らの利益のため、本案についての審判が効力を生ずるまでの間、抗告人の親権者としての職務の執行を停止する必要があるものというべきである。」

3  その他、抗告理由にかんがみ、一件記録を精査しても、原審判に違法、不当の点は見当たらない。

三  結論

よって、本件即時抗告のうち職務代行者選任に係る部分は不適法であるからこれを却下し、その余の部分は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人の負担として、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 仙田富士夫 裁判官 竹原俊一 渡邊壯)

別紙 即時抗告申立書〈省略〉

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